T様 2016年出産

初めての出産は、早朝5時の破水から始まりました。

尿漏れのような感覚で目を覚まし、ん?尿漏れ?とりあえずトイレトイレ......と、トイレに向かっている途中で、自分の意思と関係無く大量の水が漏れ出てきました。

破水するには陣痛がきていない。がしかし、尿にしては色も薄いしアンモニア臭もしないので、恐らく破水だろうと夫に病院に電話して貰うことに。

正産期に入っていたとはいえ予定日まではまだ1週間以上、前期破水なら感染の恐れもあるしこのまま病院直行だろうかとドキドキしていたのです。が、

「出血や痛みがないなら、シャワー浴びて朝ご飯食べてゆっくり病院に来てね」

アッ、ハイ。

と、いうわけで、言われた通り9時頃に病院のTriageに向かいました。

カーテンで仕切られた場所で椅子に座って、胎児の心音と陣痛をチェックする機械を着けられてそのまま待機。

ヒリンドン病院は古い病院なので椅子も使い古された感が凄かったですが、実はリクライニングチェアで結構くつろげます。

早朝5時起きでそこからずっと気を張っていたこともあって、うっかり寝落ちしそうになったところでナース登場。

取り敢えず24時間様子を見るので、陣痛がこないようであれば24時間後にまた病院に来るように、とのこと。

「あのー...このまま入院出来ないですか?」

通常の破水じゃないので何かあったら怖いというのもあったんですが......正直なところ、また病院まで来るのが面倒臭い

ヒリンドン病院がとにかく交通の便の悪い場所にあるので、自家用車の無い人間には一度帰ってまた戻ってくるというのが結構辛かったです。

幸いにもその日は産科が混み合っていなかったようで、希望を通して貰って入院する流れになりました。

案内された5人部屋は自分を含めて3つのベッドしか埋まっておらず、付添人は1人なら宿泊OKとのことで夫もそのまま病院で一夜を明かすことに。

結局、翌朝になっても陣痛がくる気配が無く、昼頃から陣痛促進剤と抗生剤を点滴するために分娩室へと移動。

妊娠中に院内見学で見たのとは別の階の、広く綺麗な部屋でした。

そこから先を担当してくれたのは、おばさん助産師と研修中の学生さんです。

助産師さんの方は複数の受け持ちがある様子で時折その場を離れていましたが、学生さんは夕方までずっと付き添ってくれていました。

本格的な陣痛を待つ傍ら、気の良い研修生と暢気にお喋りしつつ、14時頃にはシャワーと着替えの為に一旦家に帰っていた夫も合流。

微弱だった陣痛は少しづつ強くなってきていたものの、「ガス麻酔を吸入する時の音がダー〇・ベイダーに似てる」などとYoutubeで音源を拾ってきてベ〇ダ―ごっことかアホなことが出来るレベル。

子宮口も2cmほどしか開いていないということで、助産師さんが指で子宮口を広げて残っている羊水を破水させることになりました。そしてこれが......

痛い!!!!!

痛みであそこまでボロボロ涙を流して泣いたことなんて人生初。

ここまでくるとガス麻酔なんて当然効かないので、エピデュアルを希望するかどうか聞かれる。勿論YESです。

助産師さん絶賛のベテラン麻酔医が起り得る危険性を説明してくれている間も、同意書にサインをする時も、もう痛くて何がなんだかでした。

夫は同意書に書かれたリスクを読んで「本当に良いの?」と心配そうでしたが。

私は麻酔事故が起こる確率なんて万が一・億が一と思っているし、なによりエピデュアルを無料で体験できるチャンスをみすみす逃す手は無いじゃないか!痛みも取れて一石二鳥!

結論から言うと......エピデュアル、凄かったです。

それまでの痛みが嘘のように薄れて、数時間前と同じようにお喋りを楽しむ余裕が出来るくらいでした。

副作用で"むくみ"が出るので医療用のタイツを穿かせて貰い、ふたたび陣痛の波をみながら出産のタイミングを待つことになりました。

(術後の足のむくみはまさに「象の足」といった感じで軽くヒいた。というのは余談です。)

この時点で勤務時間終了のおばさん助産師と研修生の2人にお礼と別れを告げて、別の助産師さん2人にバトンタッチ。

更に1時間ほど経って時刻は20時近く。ここで事態が動きます。

子宮口がまだ開ききっていない、そして陣痛が強まる度に胎児の心拍が弱まっている、このままだと出産でいきんだ時に胎児への負担が大き過ぎるとのことで緊急帝王切開の判断が下されました。

妊娠中があまりに順調だったので、出産も自然分娩のつもり満々だった私には完全に寝耳に水でした。

しかし他に選択の余地も無く、手術の同意書にサインして処置室へと運ばれる。無痛分娩のためのエピデュアルが思わぬところで大活躍です!(ヤケ)

首から下の麻酔の所為で震えは止まらないし、嚥下もうまく出来ずに唾液で呼吸困難になりそうだし、心の準備をする暇も無くパニック状態の私。

誰の名前が一番イタリア人ぽいかで盛り上がるオペチーム。(立ち会っていた夫談)

......おい、オペチーム。

独りパニくっている私が恥ずかしいじゃないか!

出産は15分もしないうちに滞りなく終わってました。

完全に置いてきぼり状態でしたが、赤ちゃんを傍に連れてきてもらった時の感動は一生忘れないと思います。

出産後はすぐにお母さんが赤ちゃんを抱っこするのがNHSの病院では主流と聞いていましたが、流石に麻酔が抜けるまではろくに腕もあがらないので、赤ちゃんはベビーコットにのせられて回復室へと移動。

麻酔の影響と体力の消耗で眠気もピークだったのでこれで一息つけるかと思いきや、助産師さんから水分を摂って胃に食べ物を入れなくてはいけないと言われ、

「トーストで良いわよね?」

拒否権ないんですね?これが噂に聞く産後トースト(+紅茶)か。

トーストに食欲など1ミリも湧くはずがないのは予想していたので、実は夫に家からあんぱんを持ってきてもらっていました。

やはり消耗している時には日本食に限ります。冷凍していたものですが、自然解凍で丁度良い感じになってました。

半分眠りながらあんぱんと水を胃に流し込んだところで、ベッドに乗せられたまま今度は慌しく大部屋(6人部屋)に移動。

右から左から赤ちゃんの泣き声が飛び交い、必死に宥めるパパママの姿がそこ此処に。

24時間以内で退院するなら良いのですが、数日間の入院が決まっていたことや術後の発熱があったことから、流石に気が休まらないので別料金を払って個室に移して貰いました。

シャワー・トイレは二部屋で共有でしたが、その後4日間入院だったので個室にして貰えて良かったです。

特に入院中に助産師さんやナースに授乳のアドバイスや手助けをお願い出来たことは、両親学級に参加し損ねた身としてはとても有難いことでした。

イギリスでの出産ですが、保険料(National Insurance)を払っていなければ完全無料ということになります。

妊娠中の検診や出産の処置、退院後の助産師さんやヘルスビジターによるアフターケアなど、無料でこれほどのサービスが受けられるというのは非常に有難いことだと思います。

また、ヒリンドン病院ですが、誰かに聞かれたらお勧めしたいと思えるくらい、ボロいながらも素敵なスタッフの揃った良い病院でした。

以下はヒリンドン病院や今回の出産に関する個人的なまとめです。

☆病院で良い体験が出来るかどうかは、その日の病院の忙しさ次第。

混んでいれば助産師さんやナースも対応に余裕がなくなってくるのは当然のこと。

また、病院に居る時間が長ければ長いほど助産師さんやナースと話す機会も増えるので、「最初の印象は悪かったけど、話してみたら良い人だった」ということもあると思います。

今回私が関わった助産師さん・ナース・ドクターは良い人達ばかりでした。

☆個室は数に限りがあるので、入れるかどうかは運次第。

☆病院食はお馴染みのフィッシュ・アンド・チップスやコテージ・パイなどなど。リストから選ぶことが出来ます。

栄養的にどうなの?と突っ込まずにはいられませんが、味は思ったほど不味くなかったです。

一番微妙だったのがサンドイッチというオチ。

☆病院には食堂がありますが、夫によると凄く不味いそうです(汗)

付き添いの人は病院内のコスタを利用するか、食べ物を持参されることをお勧めします。

あと、病院の周りには何もありません。外で買ってくるという選択肢が無いです。

☆希望(や不満)がある場合は積極的に言った方が良いです。

黙っていても至れり尽くせりの「おもてなし」が日本。

言えば親切に対応してくれるのがイギリス。

☆「おにぎり」や「あんぱん」、水筒に入れた「お茶」「ほうじ茶」など、自宅を出る時に余裕があれば日本食を持参されると良いと思います。

(日本食で無くても、お気に入りのお菓子とかでも良いと思います。)

産後の五臓六腑に染み渡ること請負です。

☆スリッパは院内での生活を少しでも快適にするのにマスト。私は失くしても良いような以前ホテルで貰ったスリッパを使い捨てました。

☆未確認ですが、赤ちゃんを抱っこして退院しようとすると止められるそうです。車の場合は勿論チャイルドシート、それ以外ならキャリーを用意しておく必要があると思います。

☆母親学級・両親学級はNHSのガイドラインで受講時期を確認して早目に予約をしておくことをお勧めします。

私はギリギリ過ぎて定員に達してしまい参加出来ませんでした。

特に母乳育児を考えている方は、予め授乳の仕方を教わることで出産後の悩みの軽減になるのではないかと...。

(産後も助産師さんやヘルスビジターが訪問した際にアドバイスを受けることは出来ます。)

☆地区にもよると思いますが、引っ越す場合はGPに登録出来るのが「引っ越し先に住み始めてから」ということでした。

なので、「手続きにかかる時間を見越して引っ越し前に予めGPを移しておく」ということが出来ません。

GPに登録しないと病院の超音波検診の予約も出来ないし、助産師の検診も受けられませんでした。

妊娠中に引っ越しされる場合は「引っ越し先GPの登録+病院の登録」で1ヶ月近くかかることを念頭に置いておくことをお勧めします。


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