A様 2016年出産

(妊娠期間)

妊娠が判明したのは、夫の赴任が決まり二人で家を探しにロンドンに一週間滞在した翌週のことでした。翌々週には自宅の引き渡し、夫の渡英、私のアパートへの単身引越し等あわただしくすごしました。悪阻やお腹が大きくなる時期を一人で過ごしましたが、借りたアパートが会社まで徒歩5分で負担にならず、辛い時は友人と食事をしたり映画を見たり漫画を読んだりとそれなりに楽しく過ごしました。

結局日本ではその後5ヶ月仕事を続け、妊娠7ヶ月の時点で異動願いが叶い、渡英しました。渡航には赴任家族パッケージというサービスを利用したので、ヒースロー空港でも係員が常時ついて荷物も運んでもらい夫が待つ出口まで付き添ってもらいました。

出産を日本かイギリスでするかについては随分考えました。周囲の人々は家族含め日本で産んだ方が病院もしっかりしているし(そもそもロンドンの病院事情がわからなかったので)、家族のサポートも受けられるということで随分勧められましたが、高齢出産であり最後の出産になる可能性もありましたので、夫と一緒に出産~子育てを経験すべきだと考え渡英に至りました。

今になっては、夫が妊婦健診の時は常に付き添ってくれたこと(日本では一度もなかった)、入院中は一緒に宿泊して、日中John Lewis(デパート)に育児用品を買いに走ったり、退院時に大切そうに赤ちゃんを抱えてブラックキャブに乗った姿等、とてもいい思い出になりました。

(現地の病院通い~出産準備)

渡英した翌日にアクトンにジャパングリーンメディカルセンター(JGM)の婦人科に登録しに行きました。実際の診療はシティクリニックで行うとのことで、飛行機の影響も心配もあり早く確認したかったので、その日の午後にはシティに行き超音波で診療をしていただきました。どちらのクリニックの先生もとても親切で丁寧に説明して下さり本当に安心しました。

JGMでは出産に関するパッケージが2種類あり、①実際の出産に立ち会う医師が全て妊婦健診をするパッケージ、②実際の出産に立ち会う医師とJGMの医師が交互で妊婦健診をするパッケージがありました。また実際出産をする病院もPortland Hospital, St Maryから選ぶことができました。

NHSでの出産という方法もありましたが、私の場合は毎回超音波での診療を希望していたことと(NHSの場合は妊娠中2回のみ)、サービスが行き届いたプライベート病院の方がゆったりと過ごせる(病院と医師への支払いは別々で双方かなり高額)ということで会社の保険が全額カバーできるのでプライベート病院での出産を選びました。こちらの病院は日本に比べるとエスカレーター式に全て行ってくれるわけではなく何でも逐次確認する必要がありますが、現地医師の診療の際には通訳がつきますし、しっかり時間をとってくれるのでわからない用語や状況を説明していただけたように思います。その分ミッドワイフはかなりぶっきらぼうに当時感じましたが、今ではこれが普通だと思っています。

Portland Hospitalを選んだ理由は、私はベッカム夫人がここで出産したというミーハーな理由でしたが(夫は同僚に確認する等して元上司の奥様がPortland Hospitalで同じ先生に看てもらったのが決め手のようです)、後でSt. Maryはキャサリン妃が出産したところでかつ同敷地内にNHSがあり緊急時はこちらに運ばれるので安全と知り、多少後悔しましたが、Portland Hospitalも徒歩3分のところにNHSがあると聞き安心しました。病院によって様々ですが、Portlandでは院内の事前見学を行っており(日本語ツアーもあり)、マタニティブックで水中出産、無痛分娩、カンガルーケア等細かに項目があり希望することが出来ます。

こちらで妊娠期間を過ごした方は口を揃えて言われますが、ロンドンでは妊婦バッチ(地下鉄の駅でもらえます)をつけていると100%どこでも席を譲ってもらえます(ツーリストは除く)。帰宅時のラッシュの中、込み入った電車に乗ろうとすると目の前にザーッと道が出来た時はびっくりしました。おかげで安心して通勤することができました。

(出産当日)

出産日の前の週にPortland Hospitalのミッドワイフから呼び出され、病歴やアレルギーの有無、血液検査などを行っていましたので、入院は手術当日、11時に病院到着、14時には手術の予定でした。

病院につくと個室に案内され、しばらく夫と談笑していると、麻酔医がスーツ姿で部屋に挨拶に来て簡単な説明とむくみ防止靴下を渡されました。13時過ぎに着替えをし、歩いて地下の手術室に案内されました。院内も手術室も誰も入院していないような程静かでした。手術室で麻酔を入れながら麻酔医と話していると、いつの間にか担当医師が足元にいて、看護婦も2-3人手術道具を用意していました。夫は様子を一瞬見にきただけのはずが、いつのまにか手術が始まっており意図せず立ち会うことに。

手術自体は20分もたたずにあっという間に終わりました。麻酔医は夫が持参したカメラを血が苦手な夫に代わって手術の様子をパシャパシャと撮ってくれました(かなり衝撃的な写真もあり)。手術後は別の部屋で赤ちゃんを抱きながら体調をモニタリングされ、しばらくすると個室に移りました。

個室はとても広く、夫が寝るベッドもあり、食事はメニューリストの中から好きなものをいつでもオーダーすることができます。フレンチやアフタヌーンティもあり、とても美味しいです。基本母子同室ですが、同じフロアに赤ちゃん預け所があり、いつでも預けることが可能です。預ける為に夕方ごろ赤ちゃんが乗ったカートを引いて部屋に訪れた時は、部屋一杯にカートに入った赤ちゃんが並んでおり、実はこんなに入院していたんだと、しっかりとプライベートが確保されていたことに驚きました。

そこまでは良かったのですが、ペインキラー(鎮痛剤)が身体に合わなかったらしく、手術当日夕方から夜中まで1時間毎に血圧がどんどん上がり数値は190に(それ以降の確認の際は見せてもらえなかった)。翌日には血圧は下がりましたが、今度は膵臓の数値が良くないとのことで違う医師が説明に来られました(血圧問題と膵臓問題は産後1ヶ月程続きました)。病院ではペインキラーは痛みが残る時はいつでももらえますし、シーツの取り替えやヘルプが必要な時はブザーですぐきてくれます。

ミッドワイフとスタッフはすごく優しくて熱心に教えてくれる方がいたり、やはりぶっきらぼうな方がいたりと人それぞれです。ちょっと聞いた話によるとここの病院のスタッフになるには他で経験を積まなくてはならないとのことでどの方もやるべきことはしっかりやってくれていたと思います。体調が安定した3日目にはいつでも帰っていいよと言われましたが、テレビもあるし食事も出てくるし、赤ちゃんも看てもらえるので病院にはパッケージの満期4泊5日の滞在になりました。退院時にはニールズヤードレメディーズのケアセットとぬいぐるみ他をお土産に頂きました。

プライベート病院に限らずこちらで出産をする上で気をつけた方がいいことは、何でも自分から行動を起こす必要があることです。私の場合は個室に戻ってからは完全プライベートで特に授乳したかのチェックはありませんでした。授乳のやり方を聞けば教えてくれたり、手伝ってくれたりはしますが、日本の産院のように前後で体重を測ったり、指導はありません。それを知らず最初の2日は殆ど母乳が出ない状態で3日からミルクを上げ始めた為、退院時には100g程体重が減ってしまっていました。また入院中にあるはずのヒアリングチェックについても小児科医かミッドワイフが忘れていた為に、退院後に別の病院に受けにいく必要がありました。不明点がある時はすぐに周りのスタッフに確認した方がいいです。

(最後に)

ロンドンに来る前は色々心配していましたが、渡英してからは不安になる時間もなくあっという間に事が進んでいきました。NCT(National Child Trust)の産前クラスで友達を作ったりという機会は逃しましたが、必要な情報はインターネットで調べたり日本にいる友人にいつでも聞くことができました。また私の住んでいる地域は日本人の方が多く、産後沢山のママ友達が出来て、楽しく過ごしています。


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